ELVIS PRESLEY

2003年2月24日
 
 
ガキの頃の俺は、
彼の若かった頃『だけ』が好きだった。
リーゼントにナッソージャケットの彼『だけ』が好きだった。
 
“歳食ってからはよぉ、デブのおっさんじゃん。”
“エンターテイメント歌手だよ。カッコ悪ィ”
“やっぱ、リーゼントしてロカビリー歌うエルビスがサイコー”
 
そもそも、小野ヤスシが演る彼のモノマネが最初の出逢いだ。
リーゼントをした若かりしエルビスを知った後の俺は、
ロックスターの座を掴み、商業主義の申し子と化した彼を
草臥れたロカビリースターとしか思っていなかった。
70年代の彼のショウは懐メロでしかなかった。
 
他人の生き様を感じる事の出来なかった俺は、
彼の本当の姿に気付かなかった。
 
 
 
ある時、彼の晩年のビデオを見た。
長いフリンジをぶらさげたジャンプスーツに身を包み、
派手なパフォーマンスで繰り広げられるステージ。
“お、こんな顔して唄うんだ。エルビスって”
何度も見た映像の筈なのに、初めて気付いた表情。
・・・『Always On My Mind』
・・・『If I Can Dream』
・・・『MEMORIES』
なんて、悲しそうに唄うんだろう。
そう感じた瞬間、あらゆる感情が俺の中に吹き出して来た。
彼の絶望や希望や反抗や屈辱や怒りや喜びや悲しみを
少しだけ感じた時、震えが走った。
 
 
 
そうだったのか。
 
彼の外側だけを見て、勝手に成功者だと思い込んでいた。
 
彼は“本当に欲しいもの”を手に入れられないまま、
この世を去ったのだ。
人種差別の嵐が吹き荒れた時代に、
貧しい労働階級として差別と貧困の中で育った南部の田舎者が、
ピンク色のキャディラックを金を捨てる様に手に入れても、
満たされる事の無かった想い。
“それ”を手に入れる為に、疾走し続けた人生。
その、存在こそがロックンロール。
 
彼はミュージシャンやエンターテイナーなんかじゃ無かった。
 
彼が「KING」と呼ばれる意味が初めて解った。
 
涙が出た。
 
 
 
エルビスの全てがサイコーだ。
 
 
 
この気持ちを、グレースランドに捧げたい。
 
 
 
 
 

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