接待

で連れて行って貰った店が良かった。
　
いつも連れて行かれるクラブやラウンジとは、雰囲気が違った。
大抵、“私、高級ホステスなの”って割には、
時世に疎い娘が多かったりして、
さっさと引き上げて一人で飲み直しに行くんだけど、
　
和風をちょっと捻った感じのラウンジ。
トム・ウェイツが繋かっていた。
造りがラウンジっぽく無い。
映画「ミステリートレイン」を思い出した。
なんかカッコイイ。
　
ふと
“なんかロックンロールな店だな”
って言ったら、
　
“ママ呼んでくる”
って女の子がいきなり席を立ってどっか行った。
　
やって来たママはきちっとした和装の美人。
アップにした髪が良く似合っている。
ブロータイプでファセットの伊達眼鏡もイイ。
初代ルパンの時の粋な女盗賊、峰不二子みたいな感じ。
　
“わたし、ロカビリーなの”
　
おぉ、イキナリかよ。
　
“初めてのお客さんで、最初にロックンロール感じてくれる人、少ないのよ”
　
何気に自分の感受性に感謝しつつ、
　
“店、カッコイイよ”
“有難う、嬉しいです”
　
俺を連れて来た人も知らなかったらしく、
“じゃ、ママ不良だったんだ”
　
“今も、不良よ”
　
ロックンロール＝不良って短絡的な考えに辟易しつつ、
なんとも、粋なママの切り返しが続く。
　
ママ、かっこいいっス。

連れをそっちのけで、
マニアックな会話を久しぶりにした。
連れの機嫌が悪くなったので、
店を出た。

又、是非寄らせて貰います。

ママ、かっこいいっス。